カツを入れる〜たたり神にならないように〜
元気ですか?
私は人生初の入院中です。
でも、明日が退院予定日です。
そんな私のカツが入る物語。
受験生は必読です。
ひょんなことで2週間前に左足を脱臼骨折した。
こいつはやっかいなケガでギプスを巻いときゃ治る代物ではなかった。
靭帯の損傷がからんでいたため、手術で治さないとまっすぐ立てないと。
パリの斜塔だ。
私は法隆寺になるべく手術を決断した。
5泊6日の入院生活が決定した。
入院生活はヒマに違いないと思い、もののけ姫のDVDを購入した。
私の左足にもタタリがついているにちがいない。
入院初日はパラマウントベットで上体が起きる機能を堪能しているうちに夜になっていた。
牛飼いの甲六を思い出す。
しかし、病室にDVDプレーヤーはなかった。
ししがみさまが歩くと、草が生えて枯れていく情景が目に浮かんだ。
枯れていく様子が鮮明だった。
二日目は翌日の手術に備えてたはずだか、記憶がない。
三日目は手術であった。
いろいろあるが、麻酔で眠る前の最後の記憶は毛をそられていたことだ。
その後は、気が付いたらベッドの上だったってやつだ。
飲み会と同じようなものとしておこう。
目が覚めて、しばらくしたら旧友がお見舞いに来てくれた。
突然だったので驚いたが、嬉しかった。
お見舞いの方々がお帰りになって、金曜ロードショーで崖の上のポニョがやり始めるころから麻酔がきれ始めた。
大ピンチだ。
そしてしばらくすると猛烈な痛みに変わった。
これはやばい。
すかさずナースコールだ。
テポドン発射のボタンではないが、断固たる決意で押した。
看護士が来て、いろいろ聞かれた。
そう言えば、痛み止めをもらって飲んでないと思い、クスリをほしいと伝えた。
左足は痛過ぎて、人間の体からターミネーターのT1000型に変わるんじゃないかと思った。実際、ネジやら板切れやらが左足には埋蔵された。
クスリの要求に対して看護士はこう言った。
「先生に、カツを入れてもらいましょう」
なんじゃそりゃ。
先生はアゴも出てなけりゃ、赤いタオルも持ってなかったぜ。
しばらくして、セコンドと化した看護士二人を従え医者がやってきた。ゴングはまだ鳴ってない。
そしてギプスにカツを入れていった。
ポニョが波の上を走っていたのが、トラウマになりそうだ。
割を入れていった。
術後にギプスを巻いて、その中で腫れたため、私の足は行き場を失っていたようだ。
そう、イスラムの聖地メッカに巡礼に来た人々のような状態だったのだ。
そいつは割が必要じゃないか。
医者のカツで私は元気を取り戻したが、痛みはどんどん増していく。
今夜は眠れないってやつです。
昔、ハブに噛まれると痛くて1週間眠れないという話を聞いたことを思い出し、ハブに噛まれたよりはマシだと思うようにした。
そうしたところで痛みが引くわけではないので、看護士に座薬をお願いした。
今度はテポドンだ。
かくして、カツを入れられた私は悶絶の中に朝日を迎え、左足に入った金属と結合した。
この世で初めて、体に金属を入れようと思いついた人は実際に自分に入れたのだろうか。
この痛みは生涯忘れないものとなるであろう。
明日、退院したらもののけ姫を見よう。
アシタカにタタリをうつした、最初のイノシシ神は、撃たれて体の中に鉄が入って肉が腐らされてたたり神になってたな。
私の左足は腐らないだろう、じゃないとタタリ神になってしまいかねない。
左足が熱い、痛い。